食品を「売る」人から「作る」人へ
農業をする前は、食品に携わる仕事をしていました。提供する食品にこだわりをもって仕事に取り組む中で、特に農作物に関して “消費者へ情報開示がされにくい” という現状を肌で感じるようになりました。そこから食品の情報発信に興味を持ち、妻が黄ニラ農家だったこともあり農業の道へ。食品を「売る」側から「作る」側になりました。
初めは黄ニラのみを育てていましたが、後に多品目の野菜農家に転身、今では茄子やほうれん草、大根など、約20~25種類の野菜を作っています。また、自分たちで直売店を開いて販売もしており、前職で感じた疑問を払拭できるよう、ただ「作って売る」のではなくお客様に農作物の情報発信をしながら届けていきたいと思っています。
家族のための健康な野菜作り
農家大作戦では、「家族の健康のために」を外せないテーマとしています。家族が健康で過ごせるように、家族に食べさせたい健康的な野菜作りです。
この「家族の健康のために」という想いは、BLOF理論や中嶋農法に出会ってより強くなりました。
BLOF理論
BLOF理論(Bio Logical Farming:生態系調和型農業理論)は、小祝政明さんが提唱する科学的・論理的に農作物を栽培する技術です。「アミノ酸の供給」「ミネラルの供給」「太陽熱土壌処理」の3つがキーワードとなります。
■アミノ酸の供給
通常の慣行栽培では、農作物が吸収した無機態窒素と光合成で作った炭水化物を利用してアミノ酸を作り、農作物の成長に必要なタンパク質を作ります。
BLOF理論では、炭水化物付き窒素であるアミノ酸を与えるため、タンパク質を作る際に光合成で作った炭水化物をあまり使うことがありません。その分余った炭水化物は、農作物自身を強くするために使用することができます。
■土壌分析・施肥設計に基づいたミネラルの供給
土壌分析によって、土の中に野菜の成長に必要なミネラルがどれだけ含まれているかを確認。その結果によって、何をどれだけ使用するのか施肥設計を行います。
■太陽熱養生処理
土に、土壌分析の結果から必要な量の肥料や水を与えてビニールをかけ、太陽熱で蒸していきます。この太陽熱養生処理で、根張りを良くする、土の中に病原菌と戦う微生物を増やす、水溶性炭水化を与えて地力を向上させるなど、農作物が育ちやすい土壌を作ります。
太陽熱養生処理や、土壌分析に基づいて必要な分だけ人の手を加えることで、本来農作物が育つ環境よりも意図的に効率の良いものにしています。このような、バランスの取れた環境で育った野菜は、虫や病気から身を守る強さとたくさんの栄養素を蓄えることができるため、高品質で甘味や旨味のある野菜になり、収穫量の増加も期待されています。
健康ミネラル栽培
BLOF理論や、BLOF理論と類似点の多い中嶋農法の考えをもとに、農家大作戦では独自に「健康ミネラル栽培」として栽培を行っています。名前の通り、栄養素の中でもミネラルを中心に据えた農法です。
健康に欠かせないミネラルは、植物にとっても大事なもの。
現代の田畑の多くは、そのミネラルが不足していると言われています。そこで育った作物も、同じようにミネラルが不足の傾向にあると言われています。ミネラル不足が原因で、鮮度劣化、食味の低下、食物本来の栄養が失われるきっかけの一つになっているという指摘もあります。「健康ミネラル栽培」では、農作物が活き活き育つのに必要なミネラルを中心として、有機由来の肥料を積極的に使い、健康で美味しい野菜を作っています。
自分と自分の家族の健康のために食べてほしいと思える野菜作りが、お客様にとって食べたい、買いたいと思ってもらえるような品物になれば、農家にとってそれ以上の幸せはありません。
地力向上でさらに美味しく健康な野菜作り
県外から当園の野菜を求めてお越しくださったり、苦手な野菜が克服できたとの声を伺ったり、現時点でも食味で高評価をいただいていますが、目指しているものにはまだ到達していません。時間をかけて農作物にとって育ちやすい土壌に補正していくことで、さらにレベルアップした美味しい野菜ができると考えています。今の美味しさも味わっていただき、5年後、10年後にますます美味しく健康に育った野菜を食べてもらえるように努力を続けていきたいと思います。