地元ぶどう農家が立ち上げたワイナリー
ドイツの農村をイメージしたテーマパーク「おかやまフォレストパークドイツの森」。広大な敷地に季節の花々が咲き誇り、自然豊かなヨーロッパの町の雰囲気が漂うその一画に、是里ワイナリーはあります。
創業は1985年。もとは現在の場所(赤磐市仁堀中)ではなく、ワイナリーの名前にもなった赤磐市是里地区で醸造が始まりました。
赤磐市はぶどうの名産地で、当時から是里地区でもたくさんのぶどうが栽培されていました。特に「キャンベル・アーリー」という品種を中心に育てていましたが、次第にキャンベルの市場価値は下がっていきます。これをきっかけに、ぶどうの付加価値を高めようと地元のぶどう農家が集まり、市町村合併前の旧吉井町を主体として是里地区のぶどうを原料としたワイン作りに取り組みました。
1995年には、ドイツの森に醸造場を移転し、近代的な設備も導入しました。場所や設備は変わっても、創業から続く「ぶどう農家の方が大切に育てた、ぶどうの特性を最大限に引き出し、より美味しいワインに仕上げたい」という想いは変わりません。手間を惜しまず、丁寧に醸造しています。
是里地区とぶどう
是里地区では、1960年代からぶどうの栽培が始まりました。赤磐市の北部、自然豊かな小高い山の上に位置しています。標高が350mと高いため、昼間は熱く夜はぐっと気温が下がる、寒暖差の大きい地域です。また、土壌にも特徴があり、ミネラルや鉄分を豊富に含んでいます。この「温度の違い」と「土壌の特徴」が栽培に最適で、より糖度が高く品質の良いぶどうが育ちます。
ワインの品質は、ぶどうの品質に直結します。私たちがワイン作りをどんなに頑張っても、ぶどう本来の出来には勝てません。ぶどうの味が一番大事で、是里のぶどうが美味しいからこそ、ワインも美味しくなるのです。
是里ワイン
是里ワインの特徴を一言で表現するなら「フルーティーさ」です。ピオーネや、今では貴重な品種となったキャンベル・アーリーなど、ぶどうそれぞれの個性を活かした味わいに仕上げています。フルーティーで甘みのある香り深いワインです。
是里産のキャンベル・アーリーを100%使用したキャンベル・ロゼは、ワイン専門雑誌にも掲載され、最高評価の5つ星をいただきました。
そのほか赤磐市の特産である白桃やマスカットを使ったワインなど、果実味のキャラクターを活かしたワイン作りを行っています。
ワインができるまで
9月~11月ごろにぶどうを収穫、10月からワインの醸造が始まります。
まず、ワイン醸造では、果汁を取りやすくしたり茎を取り除いたりするために収穫したぶどうを軽く潰していきます。白ワインの場合は、収穫したぶどうをすぐに搾って果汁のみを発酵。赤ワインは皮ごと発酵させ、その後搾汁作業を行い、再度タンクに戻してさらに発酵します。
発酵を進め、沈殿している澱(オリ)と呼ばれる不純物や酵母のカスを取り除く澱引きの作業をしていきます。仮にぶどう1トンあれば、3割は枝や種や皮など澱となって取り除かれ、7割がワインになります。熟成期間にも澱引きやろ過を続け、醸した直後は濁っていたワインを透き通った輝きのあるものに仕上げていきます。
ワインの香りや味わいを損なわないよう、低温殺菌された瓶に詰めて出荷されます。
是里ワイナリーでは、11月にその年に収穫したぶどうを使った新酒ワイン(キャンベル・ロゼ)をお楽しみいただけるイベントも開催しています。
▼収穫したぶどうを軽く潰す。
▼醗酵させる。赤ワインは皮ごと醗酵させて渋みや香りを出す。
▼醗酵させたぶどうを搾る搾汁作業。
▼澱引きを重ねて透き通った輝くワインに仕上げる。
より本格的なワインへのチャレンジ
現在、是里ワイナリーで使用しているぶどうは、白ワイン用ぶどうの品種であるリースリングを除いて、ほとんどが生食用です。ワイナリー創業時には一般的だったキャンベル・アーリーが今では希少品種になっているように、品種改良などによりぶどうの種類は日々進化しています。
また、日本ワインも人々の嗜好の変化により、フルーティーで飲みやすいものから深みのあるものへ変化しています。
これからワイナリーとして成長していくには、ぶどうの進化に付いていく、嗜好の変化に応えていくことが必要だと感じ、「よりワインらしいワイン」にも挑戦していかなければならないと思っています。