鳥取大学農学部で乾燥地農業を専攻し、在学中にインドやパキスタン、アラブ地域の農村を巡り、農民が懸命に生きる姿に感銘を受けました。
大学卒業後は、医療支援団体ペシャワール会の現地駐在員として、アフガニスタンにて農業用水路建設や農村開発事業に携わりました。
帰国してからは、栃木県にある農業学校「アジア学院」で教員として勤務しながら有機農業の研究・実践を行っていました。
2011年の震災を機に、本当の豊さと幸せについて疑問を持ち、避難生活を送りながら「地に着いた農業の力強さ」を身に沁みて感じたことで就農を決意、人々に安全で本当においしい食べ物の提供を通して、健康な人と地域の創造を理想に、2014年岡山県美作市の地で農業を始めました。
ほのぼのハウスとは
岡山県美作市に位置する農園で、無農薬、無化学肥料で健康な野菜やお米をはじめ、自然卵や無添加おやつ、加工品を生産しています。また、製造販売だけでなく、季節の収穫体験や農業体験など、農場でしか味わえない美味しさ、経験を提供していくイベントを通年行っています。
こだわりは「人の健康、豊かな自然を守ること」
自分の子どもの健康を一番に思う親として、私たちが食べたいものを生産、提供しています。
そして植物、動物が持っている本来の力を引き出すことで自然界の生態系を壊さない農業を行っています。
畑、田んぼについて
”健康な土で作物を育てる”
ひとつ自信を持ってお伝えできることは、ほのぼのハウス農場では一切農薬や化学肥料を使っていません。作物の健康を考えながら山の落ち葉やお米のぬか、飼っている鶏の糞などが原料の肥料を使い、土の中の状態を保つために草やお米の殻をすきこんだりもします。土の状態がいいと、害虫や病気はある程度防ぐことができます。
日本では戦後の食糧難の時代、少しでも多くの野菜を得るため農薬や化学肥料は爆発的に使われるようになりました。それまで手作業でしていた除草や、収穫量が天候で大きく左右されることなどを少しでも回避できるようになり農家は格段に楽になったといえます。そして少しでも効率よく収量を得るためにかぼちゃならかぼちゃだけ、卵なら鶏だけを生産する単一栽培が主流になりました。農薬は”くすり”とはいいますが、草を殺し、虫を殺し、病気の菌を殺すものです。化学肥料を使うことは人間でいえば食べ物ではなく点滴で栄養を取っているようなものだと私たちは考えています。日本の農家がそれまで築き上げてきた、生き物と土と山との関係を断ち切ることになったとも言えます。
もちろん、農薬や化学肥料を使わない農業はとても大変です。最近ではマルチを使うようにもなりましたが、まだまだ除草は手作業が多く、特に夏場は草の成長も早いのでいかに効率よく草を取るか頭を悩ませます。腰を曲げての作業なので、特に田んぼは一面終わらせるだけで全身疲労で歩くことさえ痛みを感じるようになったりします。正直農薬を使えたらどんなに楽かと思ってしまう時も多々あります。
しかし、農薬や化学肥料を使わないことで有機肥料と土の中の微生物が働き、現代農業にはないお米や野菜の味が出ます。同じ調理法でも、スーパーで買ったものとは格段においしいのが試していただくとわかると思います。
また、その農薬や化学肥料が使われた農産物を私たちの体に入れることはとても怖いことだと思っています。まだ免疫が整っていない赤ちゃんや子どもならなおさらです。自分の子供たちに食べさせたいもの、それが私たちの農産物の大事な指標です。
卵について
”おいしい卵は健康な鶏から”
いい卵を生産する土台となるもの、それは鶏です。いい鶏はどうやって育ってくれるのか、大事にしているのはエサと環境です。エサは地域のお米や米ぬか、おからなどを国産飼料のみで自家配合して発酵させたものと、野菜作りの上で生じた雑草や野菜屑をたっぷりと与えています。国で定められたワクチンは打たなければなりませんが、抗生物質などの薬をえさに混ぜて常用したりはしていません。環境はとにかくストレスフリーな状態を保つことを心がけています。天井の高い平飼いの鶏舎で、風通しもよく、太陽の光をたくさん浴びて動き回る鶏たちは毛づやもよく、とさかも濃い赤色をしていて健康そのもの、といった姿をしています。
スーパーで売られている多くの卵は輸入物のトウモロコシを食べ、パプリカ色素が混ぜられたエサを食べることでオレンジ色の黄身の卵を産み、何弾も重ねられた小さなケージに詰め込まれ、日の光を浴びることはありません。その一つ一つの違いが味の違いにも表れています。ゆで卵で食べ比べてみてください。ほのぼのハウスの卵の白身が少し甘いのが感じられると思います。
※黄身の色について・・・人間は本能的に濃い色のもののほうがおいしそうに見えるのだそうで、スーパーの卵の黄身はオレンジ色で実際においしそうに見えます。あれはエサのトウモロコシの黄色とえさに混ぜられたパプリカ色素などで人工的に着色したものです。
一方、ほのぼのハウスの卵の黄身はレモンイエローで、初めて見た方は大体びっくりされます。それはエサに白いお米を使っており、着色料も使っていないためです。個体差があったり、夏のほうが少し色が濃いのは草をあげているからです。草の緑も黄身の色に添加されるので草をたくさんあげることができる春夏や、単純に草が好きな鶏が生む卵は少し色が濃いようです。実際に目をつむって食べ比べてみるとわかると思いますが、味に は影響はありません。
無添加おやつ、加工品について
”自分たちの子どもに食べさせたいもの”
ほのぼのハウスの商品は農場の無農薬栽培の素材をふんだんに使い、無添加で加工を行っています。最低限の調味料のみ、使われている塩や醤油、砂糖も無添加のものを使用しています。子どもたちの日々の成長をみていると、ものすごいスピードであることを実感します。時に大人の1か月分の成長は子どもたちは1日でなすと。もちろん、日々の食事、3時のおやつがいかに大切であるかが分かります。私たちは、そのような思いで、素材作りから始め、厳選した食材のみを合わせて加工品つくりをしています。もちろん、お母さんにとって日常の中で常に気をつけて食材を選び続けることは大変なストレスであり、コストがかかります。そのため、私たちは全ての商品において、こだわりぬいた素材、味をもって商品を提供していきます。赤ちゃんや子どもの特に小さい時期は味覚の形成にとても重要な時期といいます。この時期に化学調味料などの単純な味ではなく、自然由来の塩味、甘味、酸味、苦み、うまみなどの複雑な味を脳にすりこませることで豊かな味覚が形成されるようです。現代のファストフードは人間が感じる”おいしさ”を徹底的に研究し、合成されたものです。誰が食べてもおいしいものなので味自体が嫌いな人はほとんどいないと思います。子どもは”嫌いな味”を感じることで味覚を養っていくのだそうで、それは野菜や果物本来が持っている味にあります。
また、スーパーにあるほとんどすべての加工品に食品添加物や化学調味料が使われていますが、これは保存をよくしたり見た目をよくしたりのために使われるものがほとんどで、その中には発がん性などが疑われているものも多くあります。明太子や漬物なども実は原材料を見るとびっくりするほど見慣れない文字列が並んでいるものです。それぞれに使われている量は微量で国の基準を満たしているものではありますが、それがどんなデータに基づいた基準なのかすべてを知るのは難しいです。農薬と同様、戦後爆発的に使われるようになった食品添加物が私たちの体にどう影響してくるのか、少しずつ分かってきてはいますがまだまだ未知の領域でもあります。
もちろん豆腐に使われているにがりや、パンを膨らませるのに使うイーストなども添加物に含まれますし、保存のきくこれらのものは災害時や日々の生活の中でも役に立つものでもあります。すべてが害だと言い切るのは違うのかもしれません。ただ、日常食べるものは極力、無添加のものを選びたいし、選んでほしいと思っています。
※加工自体は委託しています
農場について
100年先も農場を継続すること。そんなに難しいの?と不思議に思われる方は多いと思いますが、実はとても難しいことだと私たちは考えます。ひとつは、農業は自然を守る産業でもありますが決まった農産物を自然から取り出してしまう産業だからです。そのため山にある生態系のバランスがとれた状態を維持するのが難しい。だからこそ病害虫が出たり収量が安定しにくかったりします。ほのぼのハウスでは山から学び、農業、住まい、暮らし、自然がつながって循環する仕組みづくりを心掛けています。例えばお米の殻を炭にして畑に施したり、家の壁や床に下に入れたり、もちろん畑には、作物の植え付けと同時に炭を入れ、根の健康な発達とよい微生物の働きを促します。
現代の農業は、農場は農場、自然は自然とバラバラに考えられており、すべてがつながることはありません。手間がかからない分、たくさん収穫はできますが自然の中にあるにもかかわらず農薬などで生き物がいない状態です。わかりやすいのは天空の城ラピュタの一説。
”「土に根を下ろし 風と共に生きよう 種と共に冬を越え 鳥と共に春を歌おう」どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ。”
おとぎ話の世界ではないと私たちは考えています。戦後の70年で日本はここまで変わりました。50年先はもしかしたらもっといい未来かもしれない。では100年、1000年先は?今を生きるのは私たちですが、未来を生きるのは私たちの子どもや孫やその先の子たちです。子どもたちの未来がほのぼのと平和であるように、小さくても今私たちができることを考え続けています。
”もう100年先も、里山に子どもたちの笑い声を”
ほのぼのハウスは、無農薬、無化学肥料で野菜を作り、自然の恵である落ち葉や草を畑に還して土を豊にし、里山と共に生きる持続的な農業を通して、人々の健康、豊かな自然、そして生きがいをもって働ける場所を作っていきます。もう100年先もほのぼのと平和な里山と、共にあることを願っています。